ミレニアム 6 (2020/2/9)

文字数 980文字

2019年12月10日 初版印刷 12月15日 初版発行
著者 ダヴィド・ラーゲルクランツ  訳 ヘレンハルメ美穂 、久山葉子
ハヤカワミステリ文庫



スティーグ・ラーソンによるミレニアム3部作、「ドラゴンタトゥーの女」、「火と戯れる女」、「眠れる女と狂卓の騎士」。
不幸にもスティーグ・ラーソンが三部作出版前に亡くなるという悲劇とうらはらの世界的大ヒット。
そして、ダヴィド・ラーゲルクランツにバトンが渡されての3部作、
「蜘蛛の巣を払う女」、「復讐の炎を吐く女」、そして本作「死すべき女」。
もともとシリーズ化の予定だった物語の流れから、作家交替の後も3作に渡ってミレニアムシリーズは見事に継続した。

そして、本作にて一応の決着をつけたと言われている…が1億部のベストセラーを世の中は放っておいてはくれないだろう、きっと。

TVドラマ風に言えば、シーズン1と2が終了しただけかもしれない。
このシーズン2は、類まれなヒロイン リスベット・サランデルの出自にさかのぼる暗い秘密が大きなテーマになっていた。
そのサイドストーリーとして毎回グローバルな犯罪解決に絡んでいくミレニアム誌の記者ミカエルが物語の狂言回しになり、彼を見守りながら危機に際しては身を挺してミカエルを救出するリスベットという、二人の特殊な愛情関係が細やかな糸として織り込まれている。
本作ではシーズン2のクライマックスとして、リスベットの双子の妹カミラとの因縁の対決が描かれる。
前述のように、サイドストーリーとしてスウェーデン国防大臣の過去に潜むロシアの諜報戦争の傷跡、エベレスト登頂の秘話が読者を一時も飽きさせることの無いミレニアムワールドに誘ってくれる。

素直な感想を言えば、シーズン2はオリジナルシーズンにあったジャーナリストの世界観、その葛藤と暗黒の錆のような感覚が薄れ、小説としてかなり完成度の高いものの、さほど特異なテイストではないサスペンスに移行していた。
作家が変わったのだからこれは当然のこと、ラーゲルクランツの「ミレニアム」がこの3部作で完成していた。

特別な遺伝子に基づいた記憶才能、最先端ITを使ったハッキング才能、父親から受けた虐待を反面教師とする強固な正義感。
確かにこんなキャラクターのヒロインを使わないのはもったいない気もするが、過ぎたるは及ばざるがごとし、ここで終焉するのが美しいのだろう。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み