あなたを愛してから (2018/9/23)

文字数 1,212文字

2018年7月15日発行
著者:デニス・ルヘイン
ハヤカワミステリー



デニス・ルヘインといえば「ミスティック・リバー」が代表作として有名だけど、
1994年~2010年の探偵パトリック&アンジ―シリーズでのジェットコースターサスペンスアクションは僕を虜にしてしまった。
2001年発表の「ミスティックリバー」が2003年クリント・イーストウッド監督でシネマになり一躍日本でもメジャーに、2003年の「シャッター・アイランド」もデカプリオ主演でシネマに(2009年)、2008年の「運命の日」に始まるボストン警官一家サーガは「夜に生きる(2012年)」、「過ぎ去りし世界(2015年)」の三部作抜粋の「夜に生きる」はベンアフレック主演で2017年シネマになった。
そういえばベンの弟ケイシー・アフレック(アカデミー賞主演男優)もパトリック&アンジシリーズの「ゴーン・ベイビー・ゴーン」で主演している。

ルヘインはボストン生まれ、作品もボストンを舞台にするこだわりを持っているところへボストン生まれのアフレック兄弟が映画にかかわる…というボストンがいつも寄り添っているルヘイン作品、しかしヘインが挑んだ本作は、とんでもない異色の物語になっている。

全編、主人公のレイチェル視線で語られるこの物語は、宣伝コピーにある「新境地」というよりは今まで培ってきたルヘインワールドをすべて統合した集大成に到達していた。
父親から切り離されて育った主人公レイチェルのルーツ探しが前半、TVレポーターとして成功する反面ぽっかりと空いた心の空洞を癒すことができないレイチェル、はて?これはルヘイン作品か? どこか純文学趣向も感じるハイブロウな導入に僕は戸惑った。
中盤は,そんなレイチェルを愛する男ブライアンとのロマンス満載となる、仕事上のトラブルからパニック症になった彼女を受け止めるブライアントの愛情物語は、ハ-レクインノベルのように恥ずかしげもないくらいの純愛物語。
そして、これまた宣伝コピーにある「驚愕の罠」が後半パートになっている、驚愕という言葉が足りないくらいの超弩級の展開はパトリック&アンジ―のクライマックスを思い出す、後半になって僕の知っているダークなクライムの香りがプンプンと薫ってくる。
レイチェルが夜に生きる決意をしてからのクライマックスに突き進むところで、僕はページをめくるのがもったいなくなった、
終わらないでほしいと思った久しぶりの快作、ルヘインはノーベル文学賞に十分に手が届く、おそらく本人は全くその気はないだろうが。

付録:
タイトルのSINCE WE FELL はスタンダードナンバーのSINCE I FELL FOR YOU から。
甘い歌声のレニー・ウェルチの「SINCE I FELL FOR YOU (1973年)」は
作品になかでも重要な場面で登場する。
実はこの歌は失恋をテーマにしている、さて本作でタイトルにまでなったその真相は?
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