ノースライト (2019/3/31)

文字数 720文字

2019年2月28日 発行
著者:横山秀夫
新潮社



2012年の「ロクヨン 64」 以来の長編作品。
そうなんだ、もう6年間も横山サスペンスから僕はご無沙汰していたんだ。

どちらかというと 短編連作形式が多い横山作品、そして題材は警察官以外の主人公の警察物語が多い横山作品。
本作(本の帯)の宣伝コピーにあるように、「最も美しい謎」にはちゃんと理由(わけ)があった。

主人公は建築士 !
バブル時代を謳歌し消滅していった建築関係者は多かったが、主人公はかの時代を代表する勘違い男としてメタファーされている。ちょうど同じ時期に 家具販売に携わっていた僕には、だから主人公の生き様と後悔が痛いほど理解できた。

本作には 刑事も警察職員も探偵も登場しない。
悪人もキャスティングされていないが、同様に善人もいない代わりに息づいているのは一生懸命生きようとする男女たち。
横山ミステリーには、コンセプチュアルな謎(ミステリー)が前提として構築されることが多い。
「クライマーズハイ」では勤め人の矜持、「ロクヨン64」では警察官僚権力闘争、が多種のエピソードのベースに横たわっていた。

さて、本作ではどうだったか?
それは人が引き継いでいかなければいけない「償いと許し」だったように思えた。
横山ミステリー史上、最も美しい「謎」とはいえ、ここで謎の話をするわけにはいかない。

明らかなことは、横山作品の中で最も異質な展開でありながら、最後に至ってこれほどの感動を覚え胸を詰まらされる、傑作である。
警察小説の乱立と質の低下を感じる近年において、横山さんが新しい形のミステリーを完成したことに大きな安心を覚えた。
多作である必要はない、これからも良質の横山ミステリーを読んでみたいものだ。
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