コロナ黙示録 COVID-19 APOCALYPSE (2020/9/30)

文字数 1,241文字

2020年7月24日 第1刷発行  8月17日 第2刷発行
著者 海堂尊
宝島社



海堂尊作品にかかわったオールスターが登場する新型コロナ(シンコロ)騒動を描くメディカル・エンターテイメント小説、というより、かなりの程度政治的メッセージを含んだ強毒素告発エンターテイメント小説になっている、だから面白いことこの上ない。
時の政権を揶揄するのは何とも言えない高揚感を感じるものだが、本書は過激すぎる故に現実感に乏しくなるのではないか・・・とか、さすがにここまで書いたら内閣調査室から刺客が送り込まれるのではないか・・と心配になってしまった。
幸いにもまだ海堂さんは存命であるし、当の政権が病気で投げ出され、新しい権力は今それどころではないのに違いない・・・そんなくらいシンコロ騒動の裏側にある政府の不手際が延々と
描かれている。

オールスターキャスト・・と前述したが、メインはあの「チームバチスタの栄光」で勇名を馳せた田口・白鳥コンビが語り部なっているのは至極当然のことだった。
桜宮の登場大学医学部付属病院のお馴染みメンバーも勢ぞろいしている、
高階学長、藤原看護師、如月看護師長。若月看護師長、清水Aiセンター長たちの相変らずさが、本シリーズがすでに完結したことを忘れさせてくれる、そう・・本書はシンコロ特別緊急追加版なのだ。
おまけに今作では「ジェネラル・ルージュ」こと速水雪見市救命センター長、田口・速水・清水トリオの講師だった現極北市民病院長の世良、伝説の病理医彦根、時事新報別宮記者が出番をきちんと分けて出演する。
もっとも、著者にとってシリーズごとのヒーロー、ヒロインを集めることなどは朝飯前のことではあろうけど、顧客満足度の高い構成になっている。

さて、そんな錚錚たるたるメンバーがシンコロに対峙するのが本作のテーマ。
北海道でのクラスター発生からクルーズ船の感染者を東城大学病院で引き受けるなど、2020年5月29日までシンコロの日本での感染を正確になぞって、その中に上記のお馴染みメンバーが活躍することになる。
しかしながら、著者の思いは実のところ政権の愚鈍さを医学的立場から糾弾するところにあった。
安保首相、その妻明菜、酸ヶ湯官房長官、今川首相補佐官、泉谷首相補佐官、本田厚生審議官、小日向都知事、増村道知事などなど、誰が考えても考えなくても「あの人」だとわかる人物がシンコロ騒動のなかで滑稽ダンスを披露してくれる。
安保首相(アホではなくアボ)をメンタルオネエと切り捨て、泉谷・本田両人を色ボケ欲ボケ失楽園官僚カップルと笑い飛ばす。
アボちゃんが道知事に緊急事態を先行して発出されて、その「発出」をやりたかった・・・と今川補佐官に駄々をこねるあたりは、実は僕も想像した通りだったので大いに笑った。
笑ってばかりではいられない。
今新しい総理が、シンコロ対策に取り組む、
ここはぜひとも、前政権を継承することなどゆめゆめ考えないで頂きたい、
それは本作に登場するすべての医療関係者の切なる願いに違いない。
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