悪の猿 (2024/4/28)

文字数 805文字



2018年8月20日 第1刷
著者:J ・Dバーカー  訳:富永和子
ハーパーBOOKS

「四猿」シリーズ全三巻のスターティング作である本作に巡り合ってよかった・・・というのが読後最初の感想だった。
近ごろは、お気にいり作家さんたちも老境に至り新作が乏しくなり、たまの新作も明らかにパワー減速を感じていたところだった。
なにか、あっと驚くような新しい趣向のミステリーはないのか?
そんな想いで探し求めたのが三巻シリーズの「四猿」だった。
本作に注目したのはハーパーBOOKSからの出版だという点だけ、
マイクル・コナリー「ボッシュシリーズ」がハーパーBOOKSに移籍したという理由だけだった。
事前情報によると、連続殺人犯と刑事の執念の捜査をベースに、今までになかったストーリー展開が構成されているらしい。
ただし、この説明では駄作とも名作とも判断がつかないのでまずは第一作を拝読した次第だった。
犯人の四猿とは、「見ざる、言わざる、聞かざる」に加えて「しざる」を実行する隠れた社会悪者をターゲットとした世直し型凶悪犯、いわゆる義賊の形を纏ったサイコキラーである。

本作では ターゲットになった15歳の少女を救出する刑事ポーターと仲間の捜査が、細かな章立てで描かれるなか、少女の追い詰められた現状も交互にインサートされる。
特異だったのは、四猿が意図的に残していった証拠物が物語進展の経緯で少しづつ謎解きのキーになっていることがわかること、
そしてそれ以上に四猿の少年期の異常体験がこと細やかにつづられた日記が残され、その日記もまた捜査活動・監禁少女と交互に紹介されていくという構成スタイルだった。

つまり、四猿はかってのハンニバル博士のような英知と異常を併せ持った犯罪者と、それに立ち向かう刑事たちというポリスミステリーサーガになっていた。
読後、早速続きの2巻を注文した、もちろん本巻では四猿は逮捕されることなく逃げおおせる、当然だけど。
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