とめどなく囁く (2019/4/10)

文字数 587文字

2019年3月25日 第1刷発行
著者:桐野夏生
幻冬舎



本作のテーマは 「強い女たちと 脆い男たち」 、
というと、いつもの 桐野ワールドと変わらないのであるが。
頑なに、強い女たちを描き続けてきた桐野さんではあったが、近年そのパワーに陰りがあった。
「だから荒野 (2013年)」の堂々巡りに僕は途中からリタイアした、珍しいことだろう。
自分をディープな桐野ファンだと信じていたから・・・。
「バラカ(2016年)」から少しづつ彼女の信念が蘇りつつあったが、その傾向はファンタジーのなかで成立するだけだった。
等身大の女(女性ではなく)たちが 日常生活の中で慄く恐怖、欲望、そして悪意、そんな桐野ワールドは再生されていなかった。
今作の主人公は、夫を海難事故で行方不明の末7年後離婚し、今は31歳年上のIT企業オーナーと結婚した41歳の元ライター。穏やかな毎日を担保されて再婚した主人公だが、不可思議な出来事が起きてくる。元の義理の母親、実家の家族、再婚した家族とのかかわりに忍び寄る裏切りと不実の匂い。

かっての夫は本当に死んでいるのか?
今の夫は本当に優しい老人なのか?
親友、元夫の友人たちは主人公に真実を告げているのか?
鎌倉の高級丘陵に立つ邸宅から見える相模湾の海、元夫が消えたその海の底から聞こえてくる「ささやき」は何だったのか?
平凡な女が遭遇する恐怖と謎、 桐野夏生 完全復活だった。
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