消滅 (2019/3/15)

文字数 726文字

2019年1月25日 初版発行
著者:恩田陸
幻冬舎文庫



文庫本の帯コピーは扇動的・・・而してその内容は「羊頭を掲げて羊肉を売る」だった、
恩田さんらしいハートウォーミングな一品だった。

近未来の羽田空港、入国審査で拘束された10人の日本人。
強力な台風が接近し、陸の孤島となった空港。
この10人のなかテロリストがいるという情報で、その監視と尋問に登場するヒューマノイドロボット(美人のキャスリン)。

物語はこの10人対一体のロボットの知能戦ともいえるような会話劇になっている。
ワンシチュエイション ミステリー、といっても そこには名探偵はいない。
10名が入れ替わり推理し、仮定し、真実を暴いていこうとする。

何とも、動きの少ないサスペンス・ミステリーではないか。
群像小説は「夜のピクニック」以来、恩田さんのお得意ジャンルだということにしても、今作は徹底している。
まるで一幕の心理劇を眺めているかのようだった、しかし決して退屈することはなかった。
宣伝コピーにあった「日本消滅」についてはここで申し上げるわけにはいかないが、下記の登場人物の言葉が心に響いた(ヒントにもなっている)。

『ネット社会の到来で、世界は狭くなった。一つになったと言われます。しかし、本当にそうでしょうか。画面で見る情報だけで知ったつもり、わかったつもりになっただけで、画面に上がっていなければ存在しないことになってしまう。見たいものだけ見て、信じたいものだけを選ぶ。
それはいびつな世界です。私は世界中の誰もが、互いの顔を見て、話し合ってほしいのです。声を聞き、声にこもった感情を聞き取り、会話を楽しんでほしい、そう願っています』

コンセプトありきの恩田ワールドを久しぶりに楽しませていただきました。
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