スクールボーイ閣下 (2017/8/1)

文字数 821文字

1987年1月31日 発行 2012年5月15日 10刷
著者:ジョン・ル・カレ 訳:村上博基
ハヤカワ文庫



ジョージ・スマイリーのスパイ三部作の第二部、「ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ」の続編形式になっている。
前作で英国情報部に長年巣くっていたモグラスパイを炙りだしたジョージ・スマイリーが、本作ではその経緯から英国情報部チーフとして、宿敵ソ連情報部工作指揮官カーラに一矢を報いる空前絶後の作戦を企てる。
場所は香港、1977年当時英国領香港には大陸中国の情報網と超法規の裏社会の暗躍が公然の事実として、情報戦争の下支えになっていた。
香港からタイ、ラオスへと拡大するスパイたちの戦いをベースにした、ジョ-ジ・スマイリーの孤独な戦いが描かれる。
英国推理作家協会賞を受賞した巨編。
本作では臨時の工作員として新聞記者の偽装でウェスタビーが香港に送り込まれる。
ジョージ・スマイリーの教え子でもあるウェスタビー、英国情報部が崩壊した直後の立て直し状況下での厳しいスパイ活動と、動員できる総力を注ぎ込んで香港ルートからソ連の大物スパイを釣り上げようとするスマイリーの壮絶が対比されながら物語は進む。
現代であれば、TVドラマ「NCIS」のように瞬時に情報を取得したり、不法なハッキングでデータを盗み取ることが当たり前のようになったが、当時のアナログの情報収集と分析の苦労、その作業を監督する独特な癖のある専門家たちの描写にふと懐かしさを感じたりした。

その顛末は、このレビューで明かすわけにはいかないが、前作と違ってアクションと暴力もしっかりと押さえてあり、リアルなインテリジェンス活動が読者を魅了するに違いない。
英国情報組織内の主導権争い、「いとこ」と称するアメリカCIA との虚々実々の駆け引きなど、スパイ小説のジャンルを超えた文学ワールドにまで広がる読書の愉悦をたっぷりと会い合わせていただいた。
さて、次は三部作の最終作「スマイリーと仲間たち」だ。
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