高い砦 (2013/8/3)

文字数 644文字

1965年発表
著者:デズモンド・パグリー
1980年ハヤカワ文庫NV



「英国を代表する冒険小説作家」としてアリステア・マクリーンと並び称される
デズモンド・パグリーの物語には一つの特徴がある。
それが「武器オタク」。

本作はアンデス山中で共産軍と戦う羽目になる小型機の乗客たちがテーマ。
乗客に本国に戻る革命家がいたため、ハイジャックされ墜落した乗客たちが
素人ながら反革命軍(共産軍)と素手で戦う。
乗客の一人、中世歴史研究家があり合わせ材料で「石弓」、「投擲器」を手作し抵抗する。
十字軍が城攻めに使った投擲器で敵の迫撃砲や機関銃に対抗しようとする・・・・
ナンセンスと本人たちが思っているところがユニーク。
当然ながら現実的には近代兵器にかなわないのだが、
追い詰められた勇気ある人々はこの「オタク兵器」に希望を託す。
そこに、読者を魅了する不屈のガッツが見えてくる。

南アメリカ各国の赤化、ドミノ理論がこの時代を席巻していたこと、
主人公の落ちぶれたパイロットが朝鮮戦争の戦時捕虜であったこと、
彼はいまだに中国共産軍の拷問の悪夢から逃れるためにアルコールを頼っているなど…
冒険小説としてもまた時代を反映する小説としても質が高い。

絶体絶命に追い込められて、そこから起死回生…
という冒険小説ならではのハッピーエンドも楽しめるのもうれしい。
1965年東西冷戦のさなか、
本作でも悪の共産テロリストVS英国人パイロット+CIAという構図が恥ずかしげなく採用される、これももはや歴史となった。

まさに、還暦文庫の神髄である。

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