救命センター カンファレンス・ノート (2022/1/29)

文字数 1,067文字

2021年11月10 第1刷発行
著者:浜辺祐一
集英社



「救命センター シリーズ」最新作なのだそうだ、これまでの不明を少し残念に思った。
というのには 他愛もない理由がある。
ほとんどTVドラマを観ない僕だが近年アメリカTVドラマの面白さを再認識してきた、なかでもシリーズを完全制覇したのが医療ドラマであり、「ER」、「グレイズ・アナトミー」、「シカゴ・メッド」をステイホームのお慰みにしてきた。
これらのドラマは、救命センターが舞台になっているのである。

著者である浜辺祐一氏は現在64歳にして都立墨東病院現役の救命救急センター部長であり、これまで3作を発表し118万部の売り上げがあるらしい、本作は4作目。
僕はと言えば、本シリーズ(作)のテイストは前述のTVドラマ3作のどれに近いのか?という低次元の興味で拝読した。

本作は10話からなる短編連作形式、サブタイトルのとおり 毎朝のカンファレンスでの申し送りの中に潜む医療の現実や世相を紡ぎ出すスタイルになっている。
著者らしきセンター部長が前日当直医からの患者のプレゼンに対してコメントを挟み、それに対応する若手医師、研修医の率直な意見交換の中で10件の救命事案が浮き彫りにされてくる・・・という仕掛けになっている。

10話の概略をまとめると以下のようになる:
1.重篤患者を受け入れる基準(それは死体?)
2.東京独り暮らしの身元不明女性(それは発見系?)
3.治療拒否の身元不明者(それは自殺?)
4.超高齢者の命を救うということ(それは運命?)
5.看取り患者の救命(それは善行?)
6.救命はしたけれど(それは寿命?)
7.受け入れの峻別(それは差別?)
8.DMAT・災害右派兼医療チーム要請(それは災害?)
9.救命救急センターの役目(それは急患?)
10.新型コロナがいた(それは無駄?)
(  )内は実際の短編タイトルになっている。

実際の出来事に基づいたドキュメンタリーなのだろう、加えてかなり高度な専門用語を読者に忖度することなく使用して、そこに本シリーズの目指す本質を感じた気がするが、いかんせん過去の3作を手にしていないので確信はない。
しかし短編連作に仕込まれた現在世相、社会的問題が医療現場から染み出てきている、高齢者社会・疎外・地震対策・引きもこり、そしてまさに今大きな厄災となっているウイルスパンデミック。
高齢者の端くれとしては、救命センターには運んでほしくないものよ・・・と念じた。

蛇足:本書はどのTVドラマに似通っていたかと言うと・・・「ER」、やはり「ER」は骨太の社会派ドラマだった。
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