夏への扉 / 新版 (2021/6/12)

文字数 1,002文字

2020年12月10日 印刷 12月15日 発行
著者:ロバート・A・ハインライン  訳:福島正美
ハヤカワ文庫



不朽のSF名作、ハインラインの代表作品でもある本書を手にするのは、さて何回目だろうか? 三度目?いやもっとなのだと思うが定かでない。
それくらい何回も読んでいるのだが印象が薄い。
しかしながら、読み終えた後の得も言われない暖かい満足感だけは覚えている、これこそは名作、不朽の名作なのに違いない。
(一方では、僕の加齢障害のせいでもあるに違いない)

先日、「三体」三部作を読み終えたところだ、長大重厚かつ壮大な宇宙ロマンに我が生涯でまれな感動を覚えたものの、ちょっと疲れた。
そこで、この不朽の名作に心のやすらぎを求めてみたこともあるし、本書が世界初の映画化というトピックスに突き動かされた。その映画化もなんと日本で・・・に至っては、不安のほうが先立ってきたのも隠しおおせない事実だ。
無論、映画は拝見する予定であるが、その前に今まで僕のなかで熟成された「夏への扉」の価値を今一度確認しておきたかった。

本書は1957年に刊行された時間転移ジャンルの古典、物語は1970年と2001年を行き来する、もはや僕が生きてきた過去の時間を。そこではタイムマシンと冷凍睡眠をテクニカルテーマとして、ドジな主人公の栄誉と愛を描く、益体もない夢物語といってしまえばそれまでだが、小説とはそういうものでしかない。
何回目かは不明だが、またもや僕はほんわかとした気持ちで本書を読み終えた。
次回、再読のための忘備録として訳者 福島正美さんの「訳者あとがき」を一部以下に引用する、日本SF開祖の言葉が今は懐かしい。
—引用—
「この作品は、強いて分類すれば時間テーマに属するだろうが、そこに使われたタイム・パラドックスが、とくに新手というわけではなし、タイムマシンがニューモードなわけでもない、まぁ冷凍睡眠とタイム・トラベルとを併用したところが、新しいといえば新しいだろうが、だからこの作品がおもしろいのではない。やはりむしろ、そうした設定のなかに、虚構のすきま風の、一筋だに吹き込むことをゆるさない、ハインライン一流の稠密な小説構成と、スペキュレイティブなストーリー・テリングの腕の冴えとに、その成功の理由はあるのだろう」

主人公の愛猫ピートの名誉のためにも付け加えるなら、
僕たちは皆、君と同じように「夏への扉」をさがしながら生きている。
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