そして、バトンは渡された (2019/4/25)

文字数 865文字

2018年2月25日 第一刷発行 2019年3月25日 第十三刷発行
著者:瀬尾まいこ
文藝春秋



2019年第16回本屋大賞受賞作品、ご祝儀として購入、読ませていただいた。
この大賞は「本屋さんが一番売りたい本」として選ぶものであるから、読者目線での評価が重んじられる。だから、ともすれば一般的な感動もの、とか話題性の強いものが選ばれることもある。

僕は自分の読書傾向の歪みを修正するために、本屋大賞に興味があった。
全く知らない作品が、または好みではないと判断した作品が本屋大賞に選ばれると、僕の心がざわつく。そして、念のため読ませていただこうかな・・・
と言い訳しながら本を手に取ることもある。

ことしの「そして、バトンは渡された」も、まさにその類の作品だった。
主人公は「血の繋がらない親の間をリレーされ、四回も名字が変わった(帯の宣伝コピー)」数奇な人生を歩んでいる女子高校生。
正直なところ、面倒くさいストーリーだなという予断が強く、パスしてしまった。

作者の瀬尾まいこさんは「幸福の食卓」を書いていることは、後から知ることになった。
もっとも原作ではなくシネマの出来具合に感激した事を覚えていたのではあるが。

本作も、エキセントリックな設定、3人の父親と二人の母親というフィクションならではの設定が強烈な効き目を出している。この変則条件だけで、本作の好感度は決まったようなものだった・・・ただし手にして読んだ場合はではあるが。
高校生主人公の学園物語を語る中で、その設定の仕組みが少しづつ解き明かされていくという魂胆だった。幼少期、小学生、中学生の時に主人公に起きた事件、親の死別、離婚、再婚の繰り返しをたどる物語でもあった。

そこに僕が見るのは、「親」の存在意義。
沢山の親から愛される主人公は、実は一番の幸せ者だ、決して不幸な運命に惑わされたわけではない。

そして子供は親になり、子供は・・・・の繰り返し。
そんな時にキチンと愛のバトンを手渡せるといいな。
本屋大賞にしてはこじんまりとした佇まいの小説、
とはいえ小説ならではの夢がいっぱい詰まっていた。
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