カササギ殺人事件 (2019/2/12)

文字数 887文字

2018年9月28日 初版  12月7日 7版
著者:アンソニー・ホロヴィッツ 訳:山田蘭
創元推理文庫



たまには新聞広告でミステリーを選ぶことだってある、
「年末ミステリーランキング 4冠 全制覇 」などのコピーに抗うことはできなかった。

日本のミステリーレベルが低落したのだろうか?
それとも、2018年はミステリーが不作だったのだろうか?
ミステリー命…というほどのファンではないのでその結論は控えておきたいが、本作はさほどの出来ではなかったというところが第一印象だ。

ミステリーのプロットを評価することは、即ネタバレになるので内緒にしておく。
著者のホロヴィッツさんはYA(ヤング・アダルト)分野や、TVミステリーの脚本での実績がある方らしい。ジャーロック・ホームズ、007ジェームス・ボンドの新作にも手お出されているともお聞きしている。
僕の偏見で判断すると、著者はミステリー作家というよりも エンターテイメントアジテーターではないか? いま日本でもこの類の作家が跋扈して、ベストセラー作家とかオピニオンリーダーとか呼ばれているが、本質はTVクリエイターだ。

さて、
本作が日本で圧倒的に受け入れられた(らしい)ことは、日本人の思考が単純化され、扇動されやすくなっていることでもある。
ネタばれにならない程度に本作の感想を述べるとするならば、古典へのオマージュとTV的映像の融合成果に読者が酔ったのだろう。

古典という意味は、クリスティを意識した事件設定や探偵のプロフィールが僕には印象的だった。
アナグラム、隠されたキーワードなどは一応本格ミステリーの体裁をまとっている。
そして肝心の殺人の動機が極めて現代的であると同時に、英国人独特のプライドをくすぐるものになっている、エンターテイメント的迎合に他ならない。

文庫本で上下、上巻は古典オマージュ、下巻は日常的サスペンスミステリー。
はて、こんな設定はどこかで経験したな・・・・
あの「カメラを止めるな」もこんな意表を突く構成だった。
もはや、カチカチの教条的ミステリーに読者は興味を示さなくなったことを証明した、ミステリーランキング4冠作品だった。
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