賢者たちの街 (2020/9/3)

文字数 809文字

2020年6月20日 初版印刷 6月25日 初版発行
著者 エイモア・トールズ (Amor Towles)  訳 宇佐川晶子
早川書房



「グレイト・ギャツビー (スコット・フィツジェラルド)」、「キャッチャー・イン・ザ・ライ (サリンジャー)」、からの感動をもう一度味わう・・・という殺し宣伝文句に誘われて拝読した、何せこの2作は世間の評判以上に僕のお気に入りだから 抵抗することなどできるはずもない。

ニューヨークに育った主人公が経験する1938年、アメリカの格差の原点でもあるWASPと移民階層を大きな視点とした懐かしさあふれた青春物語になっている。
主人公はロシア移民の娘、自分の才能と善なる心を信じてキャリアを昇ると同時に、自由で幅広い友人関係を目指す、言ってみれば至極当たり前の野望につつまれた若者の苦くも切ない物語なのだが、本作ではアメリカのエスタブリッシュメントのパワーが色濃くにじみ出て(出されて)いるところから、華麗なるギャツビーがどうしても思い起こされてしまう。

実際にギャツビーに似せた登場人物が主人公に大きな影響を与え、それ以上に支配階層の権力の強固さに主人公が決して屈することがないのも興味深い。
多彩な登場人物を楽しめる:
主人公と遊びのコンビを組む地方有力者の娘、出版社で経営者に立ち向かうため共闘する秘書仲間、お互いに一目で恋に落ちながら成就しない金持ち青年、その美人名付け親、遊ぶ呆けるだけの成金放蕩息子、ピルグリムファーザーズの末裔でありながら人生の意味を確認するためスペイン義勇軍に入る心優しいボーイフレンド、
1938年の一年間、主人公のドアをノックした「出来事」ひとつひとつが甘く哀しい思い出となっている。

エピローグでは、1966年時点で昔を振り返る主人公が、もう一度かって愛した人の名前をこれから毎朝呟く決意をする、
グレイト・ギャツビーのように本作もアメリカ青春物語の代表作になるに違いない。
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