日本銀行 失敗の本質 (2020/7/21)

文字数 1,017文字

2019年4月8日 初版第1刷発行
著者 原真人
小学館新書



本書のなかで こんなQ&Aがあるので最初にご紹介する:
Q:国債がこんなに激増して財政が破綻する心配はないのか?
A:国債がたくさん増えても全部国民が消化する限り、少しも心配はないのです。
 国債は国家の借金、つまり国民全体の借金ですが、同時に国民がその
 貸し手でもありますから、国が利子を払ってもその金が国の外に出ていくわけ
 ではなく国内で広く国民の懐に入っていくのです。したがって相当多額の国債
 を発行しても、経済の基盤が揺るぐような心配は全然ないのであります。

現在(2019年時点)地方を合わせた政府債務は1100兆円を超え、GDPの220%、戦後の先進国家の借金としては未踏の領域になっている、
先に挙げたQ&Aは実は1941年10月に大政翼賛会が全国の隣組に配った宣伝冊子の文言の一部であるが(ご存知の通り日本は敗戦し1945年には政府債務はGDPの200%を超えていたと推定できる)この言い訳は今の日銀の説明とよくよく似通っている。。

というように、本書では現在の日銀を太平洋戦争中の軍政府と比較してその脆弱さを論じ、小難しい金融、財政のお話を、僕のような素人にも興味を待たせながら読ませる、そのテクニックは経済ジャーナリストの著者ならではの力量だった。
まずもって対比図(添付)がユニークだ:
ノモンハン事件(戦闘)から始まって沖縄戦を経て敗戦に至る流れと
日銀の異次元緩和政策の迷走が対になって説明される、わかりやすい。



タイトルにある「失敗の本質」は日本軍を組織論から分析した35年前の書、日米開戦までにはいくつもの分かれ道があったが、その道を選んだのは結局は国民であることを考えるとき、今アベノミクスや異次元緩和政策が継続されている現状は、また日本国民がいつか来た道を歩いているような不安に苛まれる。将来、なぜあんな無謀な経済政策を許してしまったのかと後々の子孫から責められることの無いようにできないものか。

本書は2020年の新型コロナウィルスパンデミック以前に書かれたもの、異常な財政ファイナンスは何かのきっかけで大きく破綻するとも指摘する。例えばかっての太平洋戦争敗北のように。

本書はそのきっかけとは、首都圏直下型地震、南海トラフ地震、はたまた中国のバブル崩壊などではないかと警告する。
今、新型コロナによる世界的不況の嵐、この影響はどうなのか?
心配の種が大きくなっている。
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