コンテクスト・オブ・ザ・デッド (2016/11/30)

文字数 756文字

2016年11月15日 第1刷発行
著者: 羽田圭介
講談社



2015年の芥川賞作家(ピース又吉と同時受賞の羽田圭介さん)が書く 
Z(ゾンビ)小説とはどんなものかとの素直な興味本位から手にしてみた。
もっとも、特に芥川賞作家がこうあるべきだ・・・とか思いこむのが、コンテクストに浸っているというものなのかもしれないが、読み終わって納得の力作だった。
Z小説らしくイントロから知らない間にZが渋谷交差点の街中に出没してくる怖さが上手な演出だ。
ゾンビのパータンが一通り登場するのも大サービスなのか研究の成果なのか?
ゾンビに噛まれるとゾンビになるお約束から始まって、完全にゾンビにならないケース、即刻変身するケース、走るゾンビも登場する。
登場人物も九州から北海道までを網羅した大群像エピソードが用意されている。
ゾンビにならない女子高生、ゾンビ狩り担当の区役所職員、文学賞狙いの若者とその家族、作家夫婦、売れない元文学新人賞作家、出版社編集員など。
北海道をゾンビ解放区として利用する不埒な団体も作者のサスペンスサービスなのだろう。
特徴的なのは、作家と編集者・出版会の歪な関係を楽屋落ち的に描いて、
最後にはゾンビ作家が芥川賞を取るというおまけまでついている。

と言っても、本生品はスプラスティックでもコメディでもなく、
純文学なコンテクストに満ちている。
本の帯の宣伝コピーが「あなた、まだ、自分が生きていると思っているんですか?」に集約される現状の日本人への強烈な皮肉と警告が本書の身上だった。

ゾンビの文脈とは、多様性を排して画一性に身をゆだねる心地よさにつながる危険を意味していた。
KY・・・空気を読めよというしたり顔が胡散臭い。
日本人は抜きんでてハイコンテクストコミュニケーションだと自慢していると、
そこにはゾンビの末路しかない。
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