我輩ハ猫ニナル (2014/8/19)

文字数 588文字

2014年7月15日 第1刷
著者:横山悠太
講談社



第57回群像新人文学賞作品ということも勲章なのだけど、
「我輩ハ猫ニナル」というタイトルのインパクトは世間一般にも強烈だったろうことは
想像に難くない。
畏れ多くも漱石の処女長編小説の題目をいじっているわけだから。

平成の猫小説は、実は漢字が中文書体を使っているという別のインパクトを持っている。
どうしてこのような文体(字体)になったかという前説がついているのが、
普通の小説らしからぬ想いを抱かせる。

これはもしかして近年流行と聞く「ライノベ」なるものなのか?
実際には日本語を勉強する中国の方々に、最も抵抗のない文体で表現した、
日中文明差異をテーマにした小説だそうな。
タネを開陳すれば、日中混血青年の気怠いアイデンティティ意識が秋葉原の猫喫茶で
弾けてしまうというお話である。
中篇というよりは短編小説の装備だと思いながら、本家の長編「・・・猫である」との係わり合いが気になってきた。

漱石へのオマージュなのか、単なる威光拝借なのか?
と思ったが、原本は遠い昔の記憶の闇の中。
仕方がないので、もう一度読むことにしたものの、手元にないので中古本を入手した。
あぁ、この二つはまったく似て非なるもの。
歴史的近代小説と平成のラノベ。
おかげで改めて「我輩ハ猫デアル」の世界に、そして漱石の近代化批判に浸ることができた。
群像新人文学賞はその意味では意義深い。
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