長く高い壁 (2018/5/18)

文字数 473文字

2018年2月28日 初版発行
著者:浅田次郎
角川書店



アガサ・クリスティ風に言えば「万里の長城殺人事件」となる本格派ミステリーに浅田次郎さんが挑戦している。

万里の長城の一画、張飛嶺を守備する一個分隊10名が不可解な死を遂げた。
この地にいた1000名の連隊守備隊が転進したばかりで、今はわずか30名の小隊で守っていた。
戦場で死ぬことは敵に殺されないまでも戦死ということで決着できるにもかかわらず、
敢えて、従軍記者として赴任中の著名探偵小説家が事件調査を命ぜられる・・・
…というのが大筋になっている。

張飛嶺守備隊残り20名と憲兵隊20名を聴取捜査する小説家とその助手。
皆が中国ゲリラの仕業だというが、武器弾薬、糧食は手を付けていない。
その真相は、そして殺人犯人はいるのか?

尋問のやり取りは浅田さんお得意の一人称でつづられる、この中に嘘が込められているのか?
戦場という特異な環境のなかでの大量殺人事件、幾分浅田節の術中にはまった感もあるが、
お見事な解決だった。
日本陸軍の不可思議な組織形態、召集された予備役兵士の悲哀、
戦争批判もきちんと盛り込まれていた。

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