僕の島は戦場だった 封印された沖縄戦の記憶 (2014/3/7)

文字数 740文字

2013年5月20日 第1版
集英社インターナショナル
著者:佐野眞一



著者には以前「ゴーヤチャンプル風ルポルタージュ」と自称した優れた作品
「沖縄 だれにも書かれたくなかった戦後史」がある。
本作はその続編として「沖縄戦」に集中した問題提起多岐にわたるノンフィクションに
仕上がっている。
佐野眞一健在である。
ノンフィクションとしての功として「靖国訴訟問題」とついになった「援護法」のからくりを
僕は初めて知ることができた。
もう一つ「集団自決」の真相についていまだにヤマトンチュウと沖縄との
計り知れない意識のギャップを思い知る。

沖縄戦では20万人が死亡した、うち12万人は民間人だという。
そのほとんどが今靖国神社に祭られている、〇歳児に至るまで。
この解釈として、すべては戦闘にかかわることによる死亡であるからとの理由だ。
信じがたいことだが集団自決した人々も靖国に祀られている。
沖縄靖国訴訟のポイントは沖縄人は日本軍によって虐殺されたとの観点から、
靖国神社から取り下げを訴えている。

実はここに大きな欺瞞がある。
すべての犠牲者を戦闘参加者にすることによって、
遺族には「援護法」に基づく恩給が支払われている。
その金額は想像以上の金額であり、沖縄経済がアメリカ軍用地代金と遺族年金で支えられていると揶揄されているのも一方の事実だ。

沖縄戦の悲惨は「ひめゆり隊」のように美化されたものではなく、
日本軍による集団自決強制、虐殺に満ちたものの中にある。
そして今も日本の一部でありながら「日米地位協定」による圧倒的格差を受け入れている。
ちょうどこのたび慶良間諸島が国立公園に指定されたというニュースが賑やかだ。
沖縄戦でアメリカ軍が第一陣を送り込んだのがこの慶良間諸島。
そこでの民間人の悲劇は忘れ去られてしまった。
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