天国に行きたかったヒットマン (2016/12/28)

文字数 693文字

2016年11月1日 初版第1刷発行
著者: ヨナス・ヨナソン 訳:中村久里子
講談社



「窓から逃げた100歳老人」、「国を救った数学少女」に続く ヨナス・ヨナソンの三作目。
前2作は、読者(個人的印象であるが)の想像を超える荒唐無稽さと、そのハチャメチャが
最後に見事に整合するカタルシスに息をのんだ。
まだまだそんな未体験ゾーンに誘っていただけるのかと期待していたところ、
大きな肩透かしを食った。

まず本作はスウェーデン国内でのお話、過去2作のグローバル感覚はみじんもない。
そして日本人にとってかなり苦手な宗教がテーマになっている。
むろん宗教とはキリスト教のことである。
世間に恐れられている殺し屋(ヒットマン)がイエスの言葉に目覚め稼業をやめることから生じるドタバタコメディではあるが、僕には笑いのタイミングになかなか同期できなかった。
このヒットマンをダシに一儲けしようとするのが女牧師とホテルマンのカップル。
女牧師は宗教のアンチテーゼとして神を信じることができないトラウマをもち、ホテルマンは金銭に異常なコンプレックスを抱いている。
この三人が織りなす、宗教の本質と人生の宝を探し求める奇想天外な物語という体裁になっている。

ヒットマンの宗教心が「恵まれない子供・女性」に現金を施すことに執着するところなどは、
現代人の免罪符に対する皮肉なのだろう。
ヒットマンの悪名をマーケティング活用して宗教活動で一儲けするカップル。
その一方では、主人公たちを亡き者にしようとする彼らに騙された裏社会の元仲間たち。

プロットとしてはユニークで面白さを感じるところも多いが、如何せん前2作があまりにも強烈すぎたようだ。
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