夜と少女 (2024/2/6)

文字数 661文字

2021年9月15日 第1刷 2022年6月6日 第2刷 
著者:ギョーム・ミュッソ 訳:吉田恒夫
集英社文庫


ミュッソの手になる緻密かつ斬新なミステリーストーリーに魅せられて追っかけること、これで5作目になった。

主人公はミュッソ本人を想像させるベストセラー作家、彼が母校記念式典に出席するためコート・ダジュールに戻ることから再び再燃する25年前の忌まわしい殺人事件が今回のテーマになっている。その犯人が作家自身であることは早々に明らかになる。
25年間隠してきた犯罪が露呈する恐れと同時に、主人公は誰かに脅迫されることになる、「知ってるぞ」というメッセージとともに。

ミュッソ独特の大どんでん返しを今回も堪能することができるのだが、今作ではミステリーに関わる人間が大勢登場する、一種の群像犯人候補スタイルは「オリエント急行殺人事件」以来のミステリーの定番になっているが、今作では犯人が語り部になっており、探偵も刑事も現れない。
そんなミステリーが正義を貫けるのか? そもそも正義とは何か? 犯罪の本質を抉り出す試みがなされている。

といって、フランスノワールミステリーでもない。
本作にはいくつか(複数)のエピローグが付け加えられているが、そこでようやく救われるようなカタルシスを感じる。
主人公の周りに謎を取り込む人間たち・・・父、母、親友、その父、学友、教師、そして彼の魂を奪った美少女。
小説ならではの叙述トリックのみならず、多様性、ジェンダーに関わる問題提起もふくむ贅沢な構成になっている。

ミュッソ、まだまだ好調を維持し続けている。
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