Haruki Murakami を読んでいるときに 我々が読んでいる者たち

文字数 997文字

(2018/11/13)
2018年9月10日 第1刷発行
著者:辛島デイヴィッド
みすず書房



付属帯にあるコピーが本作を簡潔に説明しつくしている・・・・
《 文学が国境を超えるとき 村上春樹と英米出版界のスペシャリストたちの冒険 》 
Haruki Murakami の世界飛翔(ブレイクスルー)までの道のりを、30余名へのインタビューをもとにたどる、異色の文藝ドキュメント・・・・・

僕らはともすると村上春樹のことをノーベル文学賞に選出されるか、そうでないか…の興味で語ることが多くはないか?
はたして彼の作品をそのメッセージを深く読み取っているのだろうか?
一応読んだことはあるけど素晴らしいとか、 いいや大したことない女性向けエロ本だとかの評価でとどまってはいないか?

本作は、村上作品に魅了されて翻訳し、世界に彼を紹介した英米人のインタビューノンフィクションだ。
なぜ村上春樹が世界中で各国の言語で読まれ、いまや日本を代表する文学者になったかが明らかになる。
簡単な本作の章立ては次の通り:
「バーンバウム、村上春樹を発見する 1984-1988」
「村上春樹、アメリカへ -Haruki Murakami の英語圏進出を支えた名コンビ 1989-1990」
「新たな拠点、新たなチャレンジ 1991-1992」
「オールアメリカンな体制作りへ 1992-1994」
「 『ねじまき鳥』、世界へ羽ばたく(break through) 1993-1998」

村上のブレイクスルーに貢献した人々として主に下記の人物が登場する、
翻訳者アルフレッド・バーンバウム、ジェイ・ルービン、編集者のエルマー・ルーク、
講談社アメリカ、雑誌ニューヨーカー、出版社アルフレッド・クノップフ、エージェンシ会社ICM、各社の広報、営業担当、表紙デザイナー・・・・。

アメリカで最初に出版された長編は「羊をめぐる冒険」、
その後「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」、
そして彼の地位を不動のものにした「ねじまき鳥 クロニクル」。
これらの翻訳書は村上自身の意向もあって、アメリカの読者に受け入れられやすいように大幅な編集、削除がなされている。

日本文壇のなかでガラパゴス化している日本の作家には到底考えつかないプロジェクトだろうが、これがあっての世界の村上春樹があるのは間違いない。
世界の出版界の楽屋裏を知るとても興味深いノンフィクションだった。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み