満願 (2017/10/24)

文字数 630文字

2014年3月20日 発行、2015年1月15日 20刷
著者:米澤穂信
新潮社



残念なことに、読み逃していた本がある。
年間ミステリ3冠 (宝島社、文藝春秋、早川書房でのランキング1位)という驚異の
ミステリー本を知らなかった、今まで。
残り少ない読書人生、そんなときには躊躇せず手に取ることにしている。
今 ネットで中古本が簡単に入手できるのもリカバリーの助けになっている。

さて本書は短編集、
「夜警」、「死人宿」、「柘榴」、「万灯」、「関守」、「満願」 の6編が収められている。
テーマ(背景)はそれぞれ 【交番勤務の警官】、【昔の恋人同士】、【美人中学生姉妹】、【モウレツ商社マン】、【峠の茶屋】、【弁護士】。
6編ともに練り込まれたプロットが冴えわたり「ナルホド!」と思わせてくれる。
このプロットをどう生かしていくかが著者の大きなモチベーションだったに違いない。
ところで、ミステリーの3冠王との触れ込みだったが、この短編群は「ホラー」 良く云ってスリラー形式だった。
短編という制約の中でミステリーの機微を醸し出しつつ、読み終わった後で背筋が寒くなるという贅沢が味わえる。
プロットの才に恵まれた結果、しかしながら人間の情感が上手く伝わってこない。
浅田次郎さんの短編ではないのだから心の奥底をぐっと掴み取られるような人情は要らないといえば、それまで。
そうか、この短編集は「ゲーム」に近いのかもしれない。
大きな話題になったのもそのせいだろう・・・そして僕が気付かなかったのも。
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