教団 X (2017/12/8)

文字数 741文字

2014年12月20日 第1冊発行
2015年7月22日 第八冊発行
著者:中村文則
集英社



ただ今、中村文則作品をキャッチアップ中、伝説の名作と称せられている本作にたどり着いた。
タイトルはおどろおどろしく一方メインストリームはシンプル、単行本で567頁の
長大重量作だった。
そこに訴求されていたものは著者の様々な想い、ぎっしりと詰め込まれていた。
読み進むうち登場人物が突然一人称で語りだす・・・え~と、これは誰だっけ・・・
少しややこしいけれど著者のメッセージだと思えば納得する。
かように著者の思い入れの強い作品だけにいったん引きずり込まれるともう止まらなくなってしまう。
まして追っかけ中の僕が一気に捕らわれてしまうのは、いたく自然のことだった。

荒筋はカルト集団のテロ騒動に関する顛末、オーム真理教事件を実体験している我々には単なるフィクションとは感じられない。
しかしながら、この表の物語はそれほど深いプロットでも目新しいテーマでもない、
サスペンスまたはパニック小説としては。

本作の醍醐味は、カルト集団を軸にして右往左往する人間たちの心情が僕の痛いところを突く、隠したい感情を刺激する。
彼らとは、対立する宗教グループ代表、カルト教の教祖、心に傷ついた男女多数、テロを利用して右傾化を進める権力側・・まさに中村文則ワールド。

企業と戦争、靖国神社と戦争責任、洗脳とセックス、そして善と悪・・・・とは。
特に、穏健な宗教グループ代表の説法が作中で長々との引用される、それも何度も何度も。
どうやらこの老いた宗教者が著者の本音を代弁していたようだ、宇宙の始まり、素粒子の因果、平和への努力など話題は無限のようだった。

結局、この長編もあっという間に読み進んでしまう、
中村文則キャッチアップはまだまだ 続く。
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