女王陛下のユリシーズ号 (2013/5/29)

文字数 627文字

1972年初版 1978年5刷
著者:アリステア・マクリーン
ハヤカワ文庫NV



アリステア・マクリーン1955年のの処女作品、「海洋小説の古典」と称せられた傑作。
マクリーンといえば、「ナバロンの要塞」、「荒鷲の要塞」などの
ハリウッド大作の原作としてのほうが有名だけど、
この「H.M.S. ULYSSES」(Her Majesty Ship ULYSSES)はマクリーン小説の基盤となる
「壮絶な男の物語」である。

お話の骨子は、第二次大戦の中盤、独ソ開戦に伴う「第二戦線」支援に赴く
英国海軍護衛戦隊の物語。
ソビエトへの軍事物資を輸送する32隻の輸送船・護衛艦が最後には5隻になるまで戦い続け物資を届ける。
ヒーローは旗艦艦長ヴァレリー、ユリシーズ乗組員の信望厚く、
死して尚彼らの忠誠を獲得する理想的リーダー。
対するはドイツUボート群、いわゆる群狼と爆撃機の波状攻撃、
そして高速戦艦ティルピッツの脅威。
旗艦ユリシーズでは、戦隊司令、艦長、航海長、副長、始めすべての勇者が
最後には北極海の藻屑となる。

この小説が戦後まもなく発表され(1955年)ながら、好評を得たのは
「何のために戦うか,死ぬるか?」を明確に示したからだろう。
国家のため、家族のため、故郷のために人は戦えない。
信じるリーダーのために戦う、死ぬことが出来ると。
リーダーとは元首でも女王でもなく「艦長」だというのが本小説の秀美。

誇り、憐憫、忍辱、悲壮・・・今は日本人が忘れ去ったジョンブル魂がここに生きていた。


ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み