ゼロハチ、ゼロナナ。 (2018/9/26)

文字数 627文字

2012年4月13日 第1刷発行
著者:辻村深月
講談社文庫



2018年本屋大賞「かがみの孤城」著者 辻村深月さんフォローアップ第2作目、
2009年発表の本作は直木賞候補になっている。
著者の故郷 山梨県を舞台にしたところは「鍵のない夢を見る(2012年」と同様、一種私小説の薫り高い展開になっている。
第一章、第二章の語り手が幼馴染同士女性(31歳)になっているが、第一章は全体の80%、つまり僕は第一章のフリージャーナリスト「みずほ」にほとんどの物語を導かれる。
第二章はというと、第一章で「みずほ」が探し求める失踪者「チエミ」の事情が語られる、すなわちミステリーの大団円パートになっている。
みずほ、チエミ にまつわる登場人物が登場し、失踪したチエミと彼女を探すみずほ二人が細部にまで構築されていく様子が第一章なら、その裏面から人間関係を覗く、見直してみるのが第二章ということで、定番とは言いながら興味が深まるミステリーともに上手な展開になっている。

本作のテーマは、したがって大きな俯瞰では「友情」となる一方、地方格差、教育格差など厳しい現実や、男女の愛情スタンダードの変遷も盛り込まれ、前述した私小説的憂鬱感覚にさいなまれることになる。
第二章は短い流れのなかで、そんな鬱陶しさを吹き払うかのようなカタルシスを伴った大きな救いの展開になっている。

皆、誰も無理して生きていかなくていいんだよ。
なかなか難しいことだけどね。

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