天国でまた会おう (2016/1/6)

文字数 498文字

2015年10 月15日 発行
著者:ピエール・ルメートル
訳:平岡敦
ハヤカワ文庫



「その女アレックス」以来、ピエール・ルメートルが僕のミニ・ブーミングになっている。
「悲しみのイレーヌ」、「死のドレスを花婿に」と文春文庫から発表された作品は、いわゆる「アレックス系統」ものだった。
つまり、単純などんでん返しを超えた、肌が粟立つような怪しい意外性に僕は引き回されてしまった。
それは思いがけず、快感になった。

しかし本作「天国でまた会おう」は「アレックス系統」とはジャンルを異なる小説になっている。
あのズンズンしてくる意外性がない代わりに、物語の登場人物が強烈な人格を放っている。
第一次世界大戦で負傷した若者と彼に命を救われた若者の異様な友情がメインストーリーだが、
戦争後のフランスの悩ましいほどのカオスが二人の若者を翻弄していく過程が実にやるせない。

戦争で傷ついた若者が、どのように生き抜いたか?
また、死んでいったか?
国家のために死んだ若者たちへの皮肉な鎮魂歌として受け止めた。
この構造は現在においても少しも変わっていないとすれば、本小説は強烈な反戦物語に違いない。
新しいルメートルの世界を覗いた気がした。
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