死刑について (2022/11/21)

文字数 819文字



2022年6月16日 第1刷発行 7月15日 第3刷発行 
著者:平山敬一郎
岩波書店
著者原作「ある男」がシネマ化された。
原作のエッセンスはそのまま保たれながら、豪華俳優陣によるお見事な映像化だった。
そのタイトルになっている「ある男」は死刑囚の子供という境遇に苦しみながらも小さな幸せを掴むのだが・・・という物語展開、個人の記号としての戸籍売買犯罪から始まって人種差別、
夫婦・家族の絆と亀裂など、著者の想いが盛りだくさんだった。
「ある男」のベースにもなっている死刑に関して著者新刊が出ていたことを思い出し早速手にした。
本書は著者の講演会やシンポジウムでの発言記録を再構成したもの、わかりやすい説明になっている。
■死刑は日本独特の文化に裏付けられている
■諸外国も当然死刑必要論は根強かったが政治的判断で廃止されている
■死刑制度の危うさにある中世の魔女狩りに近い司法捜査の実態
■政治、法律、司法のみならず国民全員として社会の怠慢が死刑を維持する
■人を殺さない、命を尊重する共同体を守るべきではないか
■にもかかわらず政治日程で死刑執行があり、それを揶揄する責任者がいる
■死刑はもはや犯罪抑止力になっていない、反対に誘発すらしている
■そもそも死刑をもって死刑囚を反省させることができるのか
■大切なのは多面的で複雑な被害者の心に寄り添うこと、しかし現実は徹底的に欠落している
■日本における人権教育の失敗が、今の死刑支持につながる

僕が永い間思っていたことを著者は的確にまとめてくれている。
基本的人権である命を国家が奪うことが正しいのか否か。
正しくないとすれば、次善の刑罰を議論すべきだ、警察捜査の不備は十分すぎるくらい見聞きしているので冤罪の恐怖は計り知れない。
著者の結論である、「憎しみの国」なのか「優しさの国」を選ぶのかは国民全員の義務であるとすれば、
憎しみで連帯する社会か、優しさを持った社会を選ぶか、死刑をめぐる深い議論は日本の未来をも左右する。
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