大日本帝国の興亡 (2013/6/29)

文字数 957文字

1984年初版
著者ジョン・トーランド
ハヤカワ文庫NF 



本書は1971年毎日新聞社から出版され、早川書房が後に文庫化した、
文庫5冊の壮大な歴史ドキュメンタリーだ。
1971年ピュリツァー賞(ノンフィクション部門)を受けている。
歴史に生きたあまたの人物(歴史を動かした人も動かされた人も)のインタビューも加え、
どちらかというと歴史を平易に解き明かそうとする手法を採用している。
本著者ジョン・トーランドの後に
ラリー・コリンズ(「パリは燃えているか?」)らに継承される、「ニュー・ジャーナリズム」と呼ばれるスタイルだ。

本書は5巻から構成される:
①暁のZ 作戦 ②昇る太陽 ③死の島々 ④神風吹かず ⑤平和への道
大いなる概略を言えば:
①2・26事件から発する軍部の下剋上がもたらした「真珠湾奇襲」に至るまでの日本中の興奮
②真珠湾奇襲成功からインドシナ、フィリピンでの勝利と、ミッドウェイ開戦での敗北による攻守交替
③ガダルカナル島、サイパン島の玉砕、太平洋の島々を巡る血みどろの戦闘
④レイテ島、硫黄島、東京空襲、沖縄戦での壊滅的軍事力喪失
⑤広島、長崎への原爆投下に代表される国家滅亡の危機に臨む日本と、平和への努力

本書は実は「日本人側」の目線で書かれている。
アメリカの取材の緻密さと同様にかなりの細やかな日本人のエピソードが
戦場、銃後において取材構成されている。
そしてアメリカ人が読んでも、不可解な敵日本人が理解できるよな工夫がなされている。
このあたりが、ピュリツァー賞たる所以だ。

今読み返してみて気づきなおしたのは:
★昭和天皇と内閣(特に軍部)との関係を明確にしている
 軍部を独走を止められなかった天皇が最後には憲法に反して戦争を終結させる。
 つまりは天皇は国家最高権力者だった。
★マッカーサー元帥の言葉を借りて、「この戦争を日本の防衛戦争」とし、
 同時にそこには拭いがたい人種偏見(黄禍思想)もあったことを指摘している。
★戦前の日本人は今の日本人とは異なる人種だったかのように思えるが、
 そこにはマスコミの煽動に弱い国民性が今も変わらないことに不安を覚える。
★戦争、殺し合いからはないも生まれないことを、改めて学んだ。
★ただし、武器を持てば使ってみたくなり、一度は勝利という悪魔の快楽を味わってみたいと
 思うのが人間なのだ。
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