新宿鮫Ⅺ 暗躍領域 (2020/2/17)

文字数 991文字

2019年11月30日 初版第1刷発行
著者 大沢在昌
光文社




1990年第一作「新宿鮫」から29年目の第十一作が本作「暗躍領域」、
長期間のポリスストーリシリーズではあるが世界には50年間続いた「87分署シリーズ」はじめ数多くの名作シリーズがドドーンと殿堂入りしている。
それでも29年間にわたって、一人のヒーロー「新宿鮫」にフォーカスした本シリーズは大沢在昌代表作と言って間違いのない質の高さで毎回僕を魅了してくれてきた。

特筆すべきは作品数、29年間で11作、おおざっぱに言えば3年に一作しかお目に掛かれないことになっている、本作は2011年の「絆回廊」からなんと8年も経過している(単行本ベースだと)。
僕個人にとっては忘れた頃の「新宿鮫」、また会えて超ラッキー鮫島警部…というまるでお年玉のような小説になっている。

久しぶりのお愉しみお年玉は、さてどうだったのか?
キャリア出身なのに上層部と対立して組織からはみ出したまま、それでも現場の刑事を天職として不正に立ち向かう一匹狼(いや鮫)が健在だった。
唯一の後ろ盾だった新宿署生活安全課桃井課長の殉職後、後任となったのが規律優先の叩き上げ女性課長、彼女の指示で生涯初めて相棒と捜査をする鮫、むろん一服の清涼剤(?)鑑識の藪さんは健在だ。
キャリア同期のライバル香田も新しい立場で鮫と競い合う、彼の生き方のルーツであるハム(公安警察)と鮫との確執もこれまた本シリーズがサーガたる所以でもある。
舞台はもちろん「新宿」、今作は新宿の違法民泊での殺人事件から始まる。
今作の仕掛けはなかなか壮大だった、近作で活躍する中国残留孤児犯罪グループ、相変わらずの日本組織暴力団、北朝鮮からはぐれた一匹狼、新宿署に入り込む公安スパイ、人質奪回の不法強行捜査、殺し屋を巡る切ない恋と破局・・・・などなどサービス過剰気味のエピソード満載になっている。
終盤のまとめで、珍しく不合理な流れに彷徨いこみそうになるが、そこはさすがベテラン大沢さん、うまくまとめ切っていく。
今、ちょうど新型コロナウィするがパンデミックになろうとしているアジア、本作はタイムリーなキーワード設定になっていた。
そういえば今作では、新宿鮫の愛が全く描かれていない、この点は次回に期待していいのか?
いや、新宿鮫に色恋は無用だ、本作のように不正に向かって一人で突き進むところに「新宿鮫」の醍醐味があった。
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