カタロニア讃歌 (2013/9/5)

文字数 686文字

1938年発表 ハヤカワ文庫ノンフィクション 1990年第2刷
著者:ジョージ・オーウェル 訳:新庄哲夫



ジョージ・オーウェルといえば「1984」があまりにも有名である。
しかし1938年に発表した、スペイン内戦ルポルタージュ【カタロニア讃歌】において
独裁権力の一端に触れたからこそ名作「1984」が誕生している。

もともとは記者としてバルセロナ入りしたオーウェルだが、
信条である「あまねき人間らしさのため」に人民戦線義勇軍に身を投じる。
この「人民戦線」がファシストと同類の化物、不可解な権力として一方では語られる。
フランコ軍が叛乱を決起したとき、各労働者組織が銃をとって戦い、
共和国軍立ち直りまで肩代わりした。
この人民戦線もソビエトの反労働者政策により最後には崩壊してしまう。
このような説明をすると、まるでロバート・キャパの写真を彷彿させるような
激戦のルポを想像するが、実際には塹壕でのみじめな実態が記録されている。
とはいえ、オーウェル本人も喉を狙撃され生死をさまようなど戦争の恐怖は淡々と描かれている。

だから、僕はスペイン内戦ルポを通じて「記録された歴史はまるで嘘の塊だ」
と断言するオーウェルを信じる。
スペイン内戦は
「初めて労働者が樹立したユートピアを世界中のブルジョアジーが寄ってたかって叩き潰した」という彼の結論にも同意する。
決して、ナチスや、共産主義の介入が歴史のメインストリームではなかった。
本作の底流に流れるのは、スペイン人への愛情、
世界から参集した義勇兵(ドイツ、イタリアからも)への深い想いである。
ノンフィクションの最高峰を再読できる喜びはあまりにも大きかった。
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