僕はイエローでホワイトで、ちょっとブルー (2019/11/25)

文字数 714文字

2019年6月20日 発行 7月15日3刷
著者 ブレイディ みかこ
新潮社



ブライトンに住む肝っ玉母さんが書いた息子の中学入学からの一年半の記録、となっているが脚色されたノンフィクションであろう。まっ平らなノンフィクションなんぞは存在しないと思う。
カトリック系の小学校から一転して、母さんが「元底辺中学校」と呼ぶ公立中学に入学するところから、この一家と友達、ママ友、教師、との交流をあっけらかんと描いている。
元大英帝国の緊縮財政の現状から生じる子供への福祉予算削減、それに立ち向かう親たち、
学校の格差そして学校内の格差の現状、移民の増加による根強い人種差別とその対応策、
LGBTはじめ多様性のなか、アイデンティティの拠り所に悩むダブル人種の息子それを克服するパワー、中学校の日常のなかにこれら難問を抱え込むイギリスの現状は日本からとうてい想像のできないことばかり。
何も知らないままダイナミズムのない現状に留まる日本の脆弱さを心配するが、といって今の日本にはその問題意識すらない。
「多様性」という言葉ですらどれほどの理解と定着があるのか?
「富の格差」を批判するだけでなく、底辺でできることは何かも本書はさりげなく教えてくれる。
相手の気持ちにシンクロする。自分だけが、または友達だけがハッピーであればいい日本人には耳の痛いイギリスの奮闘ぶりだ。
EU離脱というとてつもない大きな問題を抱えながら、庶民レベルで精いっぱいまっすぐな道を進もうとするこのアイルランド・日本ミックスファミリー。

何もしないままでいてはいけないこと、できることはあるはずと信じること、いろいろと中学生に教えてもらった。
読み物としても、教養書としてもユニークな一冊だ。
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