報復 VENGEANCE (2016/2/14)

文字数 791文字

2015年12月25日 初版刷発行
著者:ドン・ウィンズロウ  訳:青木創、国弘喜美代
角川文庫



ドン・ウィンズロウといえば2005年の「犬の力」が有名だった。
もうすぐ続編の「カルテル」が出版され、この2作合併の映画も今秋リドリー・スコット、
デカプリオで公開される予定だ。
今一番脂の乗り切った米国冒険小説の担い手だ。
著者は、犯罪者物語を得意とし、いわゆるピカレスク小説にジャンル分けされていたが、
前述の「犬の力」で壮大な国際犯罪にまみれた、アメリカの麻薬戦争を描き一皮むけた感があった。
なににせよ、今年はドン・ウィンズロウの年になりそうだ。

ところで本作は、そんな著者がドイツで発刊した、
テロリストに報復する(元)特殊部隊員のお話だ。
そうまさしく、9.11以来、沸いて出た類いのテーマである。
そして、これは僕の想像だが、このステレオタイプ、イージーアクションは著者のイメージダウンにあると懸念してアメリカでは発表されなかったのだろう。
そんな曰くありそうな作品とはいえ、いち早く日本で発表された以上ファンとして手に取らざるを得ない。

物語は、きわめてシンプル。
テロで民間航空機が爆破され、妻子を失った元デルタ隊員が、
各国の特殊部隊員(戦争の犬たち)とチームを組んで首謀者を殺害するという一巻だ。
アメリカ政府は、テロ対策不備を隠蔽し事故として処理、主人公の報復を阻止しようとする。
多額の補償金を遺族から報復資金として募るところから、米、英、伊、仏、蘭、独、イスラエル、ローデシア、そしてなんとハマスの精鋭が協力するまで、VEGEANCE作戦の全貌が
克明に語られる。

次に細菌テロを計画する凶悪なテロリストを追いつめるという、武器、戦争オタクにはたまらないシチュエイションになっている。
全編これコンバット一色というサービスだが、確かにこのお話ではアメリカ国防省も納得できないだろう。
日本人でよかった。
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