生きて帰ってきた男 -ある日本兵の戦争と戦後 (2015/9/10)

文字数 562文字

2015/6/15  第1刷発行
著者;小熊英二
岩波新書



戦後70周年記念ブックレビュー (その1)
著者の父、小熊謙二さんは今年90歳、彼の戦前・戦中・戦後を聴きとって本にした。
著者の指摘にもあるが、一般人のこの種の記録、執筆は極めて珍しいものだ。
個人史を書き残す人は学歴や文筆力などに恵まれたているため
一部の階層しか見ることができず、
一方本人に強烈な思い入れがある場合は、その内容に客観性が欠ける場合が多いらしい、一般的には。

著者の父は、どちらかというとアイロニカルなくらい冷静で淡々と世情を見つめてきている。
1944年、19歳で召集され、満州に送られて終戦でそのままシベリアに抑留され、
帰国したのが1948年、
戦後の混乱期を流転した後結核を発病し1956年まで療養所生活を過ごす。
20代を戦争、捕虜、病気で失ってしまう。
その後は自営の商店で成功し、晩年は各種の社会活動に協力する。
印象的だったのは、
◆知らない間に戦争が始まって知らない間に終わった恐怖。
◆東条英機は卑怯者、昭和天皇は大元帥としての戦争責任がある・・・という一兵士の真情。
◆どんな苦境においても「希望」を失わなかったこと

わが父からも戦争前後の話を聞くことがあるがあくまでも断片的なもの、
本作品は一人の庶民のたぐいまれな記憶力と観察力の賜物である。
貴重な資料だ。
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