テスカトリポカ (2021/9/12)

文字数 751文字

2021年2月19日 初版発行 8月5日 8刷発行
著者:佐藤究
株式会社KADOKAWA



2021年上半期「直木賞」受賞作品、受賞をきっかけに手にした。
ミーハーではない、テーマがメキシコ麻薬密売に関連するとの情報に反応した。
本書第一部の舞台はメキシコシナロア州、
と言えばシナロア麻薬カルテルとDEA捜査官との戦いの40年間を描いた「犬の力」、「ザ・カルテル」、「ザ・ボーダー」の三部作大河小説を 思い浮かべてしまう、このシリーズはドン・ウィンズロウの代表作になった(チョイと重厚すぎたが)。
その第一部には、メキシコから流れ着いた少女、その息子が登場してくる、シナロア・マフィアと 川崎の接点が浮かび上がる、不可思議なイントロになっている。
あとはアレヨアレヨという急展開の流れで、シナロア・マフィアのボスがインドネシアに身を潜め、家族を皆殺した敵対マフィアへの復讐のための新しいビジネスを立ち上げる、そこに日本の
闇医者が加わり、再度舞台は川崎に立ち戻る・・・なんとトレンディな犯罪物語りであろうか!

そのとおり、本書はアウトロー、それも冷酷なメキシコマフィアがベースになり、現代のグローバル犯罪の実態をあからさまにして見せる、麻薬密売、臓器取引などすべては金のため。
しかしながら、本書が単純なノワール小説にとどまらなかったのには、全編に流れるアステカ神話、それを信奉するマフィア、伝統を継承する若者というオカルト面の味付けがいくぶん執拗に施されている。
アステカ文明のベースにあった(という)人身生贄供養の祝祭を現代日本に蘇らせる試みが、一層人間の心の闇を際立たせている。
シナロア・麻薬カルテルと日本の接点は麻薬だけではない、
どこか奇妙にアステカ神話に共鳴する日本文化を感じて寒気がした。
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