AX アックス (2017/11/26)

文字数 517文字

2017年7月28日 初版発行
著者:伊坂幸太郎
角川書店



「グラス・ホッパー」、「マリア・ビートル」に続く殺し屋シリーズ第3弾、おなじみの顔もちらほら見えるが本作の主人公は恐妻家の「兜」。
短編連作形式になっている、不幸な幼少期のせいで殺し屋稼業に身をおきながら、昼間は文房具メーカーの営業マン、家族は妻と長男という異例のホームドラマ設定になっていることもさることながら、彼が恐妻家であり、読み進むうちに、それは裏稼業と現在の環境のギャップから来るものであることが推察できる。

つまり自分は幸せな平凡な人生を送ることなどできないほどの悪人だという悟りのようなものが極度の恐妻家にさせたのだろう。
アイロニカルなコメディタッチの殺し屋物語かと思っていたら、それも違っていた。
5編の短編は最後の章「FINE」にて大きな展開になる・・・FINEっていうくらいだからその通りではあるが。
家族のために足を洗おうと決意した主人公「兜」とそれを阻止する仲介業者、まるで売れっ子タレントとエージェントの争いのようだったが、その争いに賭けるものは命、それも家族の命。
殺し屋の家族愛、という相反するテイストに挑戦する本作、ラストの感動はだからこそ強烈で暖かだった。
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