紅だ! (2022/8/29)

文字数 907文字

2022年7月30日第一刷発行 
著者:桜庭一樹
文藝春秋


多種ジャンル多作の桜庭作品の中で、僕は一般向け(おかしな定義だが)小説のファンであり、そのすべてをフォローしている。
そのつもりだが、多種類ジャンルと前述したように一般向けと理解して手にしたら、ノベライゼーション作だったりすることもあることはある。

さて、本作はどうやらシリーズ始まりを予感させる、きわめてカジュアルな探偵物語だった。
ライトノベルまで軽くはないが事件展開、人物描写には力瘤が見られずしかしそれでいながら全編すべてがフレッシュだった。
著者一般向け初期(2004~2009)作品群に感じた驚きにそれはよく似ている、もしかして桜庭一樹パート2が始まったのかと、慄いた。
今年2月刊行「少女を埋める」で語られた母親からの精神的独立に、本書が何かしら影響を受けているのかとも想像するが、
ドントマインド 小説は読んで大好きになるだけで十分だ。

ということで、僕はこのシリーズ(らしき兆候あり)第一作が気に入った。
主人公は道明寺探偵事務所社員二人、紅(くれない)と橡(つるばみ)、敢えて名付けるとすれば「傷心バディ」かな。
紅(30歳)はテコンドーの元オリンピアン、橡(28歳)はどうやら元警官らしい、二人の過去は本作では極小に抑えられている。
二人のアクションシーンは前代未聞設定で大いに笑わせてもらった、今後もきっと定番見せ場になるに違いない。
二人を拾って育てた葉所長は不慮の死を遂げたことになっていることも併せて、今作はシリーズの伏線が一杯仕掛けられている(かな)。

事件は15歳の少女をボディガードすることから生じる、彼女の首に闇サイトで懸賞金150万円が懸けられているという。探偵バディ小説だから、その後の顛末をここで伝えることはしないが、犯罪そのものが現代を象徴する形になっている、
できることなら変化の激しい世相を高齢者の僕にも教えてくれるような探偵物語サーガになるといいのだが。

多国籍化著しい新大久保・百人町にいる何でも屋と言ってもいい探偵バディ、しかし事件のサイズはどうやら地球サイズに広がりそうな展開だ。
二人のこれからが、もう今から気になって仕方がない。
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