地下道の鳩 ジョン・ル・カレ回想録 (2017/7/2)

文字数 902文字

2017年3月15日 初版刷発行、4 月25日再版発行
著者:ジョン・ル・カレ
早川書房



86歳になる著者の自分史のような回想録、独特のユーモアとあけすけな正直具合そして辛辣なユーモアを楽しむことができました。

下記の本作のカバー裏の番宣コピーを見てもその楽しさがご想像していただけるでしょう;
●イギリスの二大諜報機関MI5とMI6に在籍していたこと
●詐欺師だった父親の奇想天外な生涯と母親、家族のこと
●ジョ-ジ・スマイリーなどの小説の登場人物のモデル
●中東などの紛争地帯での取材やソ連崩壊前後のロシア訪問
●二重スパイ キム・フィルビーへの思い
●PLO(パレスチナ解放戦線)のアラファト議長、《ソ連水爆の父》サハロフ、サッチャー首相らとの出会い
●作家グレアム・グリーン、《寒い国から帰ったスパイ》のリチャード・バートン、ジョージスマイリーを演じたアレック・ギネス、 キューブリック、コッポラなど映画監督との交流
●実現しなかった数々の映画化企画

ル・カレの作品を全く読んだことのない読者にも興味深い内容ばかりです、何せ最近の作品を読んでいない僕、昔読んだ作品の内容をすっかり忘れてしまっている僕でも戸惑うことはなかったのですから。
なかでも圧巻は父親ロニーに関する章「著者の父の息子」、ここでは父親の天才的犯罪才能を自分の小説作法に重複させ父への愛憎を昇華させています。

…(自分は)生来嘘つきで、嘘をつくようしつけられ、嘘で生計を立てる業界で訓練され、小説家として嘘の中で生きている・・・本文より

…グレアム・グリーン曰く、子供時代は作家にとっての預金残高である、その伝でいけば、
少なくとも私は億万長者の家に生まれた・・・本文より

三部作「ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ」、「スクールボーイ閣下」、「スマイリーの仲間たち」をもう一度読んでみようっと。

タイトル「地下道の鳩」とは、モンテカルロにある射撃場に住む鳩のこと。
海を見晴らす射撃場の下からトンネルを通って鳩が飛び出す。
運よく撃たれなかった鳩はまた巣に戻り、トンネルからまた飛び出す、
まるでスパイのようだという。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み