窓から逃げた100歳老人 (2014/12/13)

文字数 707文字

2014年7月6日 初版第1刷
著者:ヨナス・ヨナソン  訳:柳瀬尚紀
西村書店



2014年僕の偏見と独断ブックレビュー第1位になりそうな、たいへん愉快な大ぼら物語。
またしてものスウェーデンの小説だ。全世界で800万部のモンスターベストセラーだとも聞いた。
そしてベストセラーにありがちなレベルの低さは「スウェーデンもの」にはないこともこの作品がまたまた証明してくれた。

先ずはタイトルに騙されてしまう。
確かに100歳の誕生日に老人ホームから逃げだすのが主人公の老人。
そこから始まる老人パワーのロードストーリが、いわゆる現代のお話(2005年時点)
なんだけど、これも痛快かつミステリアスなアクションになっている。

ところがどっこい、この物語には裏話が仕組まれている。
1905年から24歳になるまで本主人公は悲惨な人生を歩むのだが、
ここからは世界流浪の冒険譚の数々が始まる。
詳細はぜひご一読していただきたいが、主人公が出逢い、ひと悶着を起こす人物が
歴史上の重要人物ばかり・・・ずらりと揃えられている。
フランコ将軍、トルーマン大統領、宋美齢(蒋介石夫人)、江青(毛沢東夫人)、チャーチル、スターリン、金日成、金正日、毛沢東、ドゴール、リンドン・ジョンソンという面々である。
当然、放浪の場所もスペイン、ロス・アラモス、中国、ヒマラヤ、イラン、モスクワ、
ウラジオストック、朝鮮半島、バリ島、パリ、と荒唐無稽の粉飾満載である。

しかし、この与太話の構成が見事なばかりに調和がとれている。
この裏物語が最後には、現実物語に交わる技に、読後しばし呆然としてしまう。
「小説はすべと法螺と嘘」だと定義したのは小松左京。
本小説はその極を達成していた。
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