沈みゆく大国アメリカ (2015/9/4)

文字数 982文字

2014/11/19第1刷発行  2014/12/16 第3刷発行
著者:堤未果
集英社新書



反米ジャーナリストの急先鋒 堤さんの今作のターゲットは
「オバマケア(国民健康皆保険制度)の実態」です。
オバマ大統領が執着し実現にこぎつけたアメリカ版国民皆保険制度を胸のすくように斬り捨てています、
ここまで言っていいのかい…ってな感じです。
実はアメリカ国民自身も、いや医療関係者すらもオバマケアの悲惨な実態を知らなかったという背景もレポートされています。
当該法律の内容は複雑極まりないため、詳細を説明する代わりに著者は、
個別のオバマケア―体験者を取材しています。
そこから浮かび上がってくるのは、日本の国民皆保険制度とは似ても似つかないモンスターの姿です。

比喩として上手い表現があります:
『オバマケア―はまるで、雨が降ったとき濡れないように、国民全員に笠を買って渡したような法律です。ところがいざ雨が降って笠を開いてみると、傘は布でなく紙でできていて、どんどん穴があき、みなずぶ濡れになってしまう。しかも笠の代金は、国民から集めた財布から支払われていたということ』
つまりは、オバマ法案は高価な欠陥商品だということです。

物事には裏表があります。
この高価な欠陥商品は、ある人たち取っては、お金を運んでくる魔法の金の小槌になります。
その人たちとはメガ銀行、ウォール街の投資家、そして医療保険会社と製薬会社です。
著者が「ルポ 最貧国アメリカ(2008)」以来訴え続けている国家解体ゲームのプレイヤーたちです。

そして今、アベノミクスの第三の矢である国家戦略特区制度の中で、医療の自由化の名のもとに、国家解体ゲーム(利益至上ゲーム)が持ち込まれようとしています。
病院の株式会社経営、医療の自由化、混合診療解禁など、規制撤廃地区が予定されているのは、東京と大阪です。
日本の国民健康保険制度は、憲法25条による生存権の保障からスタートした世界でも貴重な制度です。
しかしながら、現実にはアメリカ発の「ヘルスケアリート」に代表される投資商品として、
政府の成長産業に一環として承認されるなど着々とその存在が脅かされてきています。
「いのち」が一つの商品として扱われることになります。
戦後レジームからの脱却が、ほんの一部のスーパーリッチ(富裕層)のための世界構築であるなら、日本は戦後のままでいいでしょう。

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