「つなみ」の子どもたち 作文に書かれなかった物語 (2021/2/21)

文字数 867文字

2011年12月10日 第1刷発行
著者 森健
文藝春秋



来月の11日(2021年3月11日)を前にして本書を手にした。
2月21日(土)深夜の大きな地震は、かの東日本大震災を風化させないで欲しいという
犠牲者や残された被災者の願いだったのかとも思えるほどのタイミングだった。

本書は2011年12月に発刊された、3月11日の記憶を作文にしたためた子供たちのムック
文藝春秋臨時増刊号「つなみ 被災地の子ども80人の作文集」をフォローする形のものだ。
僕は当時このムックを読んでいないけど、ムックと言い本書と言いその発表のスピードに
今更ながら驚いている。
本書は発刊からほどなく手に入れて(中古本で)いたがずっと積まれたままになっていた、
入手した時期も定かに覚えていない、まるで触れるのを怖がっていたかのように。

また3月11日がやってくる、それも10年目の節目になって。
拝読しながら、改めて津波の怖さを想像し息を詰めてしまった。
本書では前述の80人の作文のなかから選んだ9点の作文を取り上げ、本人と家族の物語を紡いでいる。
小学生6人、中学生2人、高校生1人の作文の裡にある葛藤・恐怖・哀しみ・そして勇気と希望が10年後においても僕の胸を打つ。
一人ひとり事情の異なる境遇にありながら地域の人たちとの助け合いの心に、東北人の優しさと根性を嗅ぎ取る。
表紙に「10の家族の喪失と再生のドキュメント」となっているが、残りの1人は昭和8年の大地震で大家族のなか一人だけ生き残った90歳(2011年当時)老人の災害時作文、吉村昭著「三陸海岸第津波」のなかで取り上げた子供たちの作文のひとつだ。
そう、本書はこの吉村昭の作品に倣って子供たちに作文を書いてもらう作法から派生した密度の高いノンフィクションになっている。

今目の前に迫っている大地震災害の危機を、手をこまねいて、または知らないふりをしている僕を目覚めさせてくれる。
そして我々は未知のウィルスパンデミックを防ぐ、CO2削減政策を進める・・・
地震災害対策も含め何も用意できていないことに今更ながら唖然としてしまう。
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