原発ホワイトアウト (2015/1/9)

文字数 714文字

2013年9月11日 第1刷  2013年11月5日 第5冊
著者:若杉冽
講談社



本の帯の宣伝コピーが強烈だ: 「原発はまた、必ず爆発する」
現役霞が関エリートキャリ官僚(東大法学部卒)によるリアル告発ノベルだとも喧伝している。
実はこの作品はずっと敬遠していた。
ノンフィクションならともかく、小説仕立てにして読めるほどのレベルになっているのかという懸念勝ちだった。
ところが2作目の「東京ブラックアウト」も話題になっているので、
こっそりとアマゾンの書評をのぞいてみた。
そこで感じたのは・・・否定的書評がいかにも胡散臭い。
言い換えれば、「原子力村」住民がこぞって批判のための批判をしているように感じた。
むろん賞賛の書評が圧倒的に多いのも確認した。
読書において一般の意見を聞くことは僕の場合は稀であるが、
今回は悩みぬいて一度読んでみようかと思い至った。

著者の心意気に感銘した。
原子力事業にかかわる闇に小説という舞台で見事にスポットライトを当てた。
総括原価方式に隠された安全かつ完璧な政治資金集金システム、
これでは保守勢力が原発再稼働に執着するのは当たり前だ。
反対勢力を駆逐するための実質的(しかし裏の)指揮権発動の不安、秘密保持法の適用実態、
原発再稼働安全基準のいい加減さ・・・などなど
フクシマの悲劇から3年を迎えるにあたって本作が執筆された意義も、
今悲劇4年目を迎える中、原発再稼働は既定の事実のように扱われる現実に恐怖を覚える。

懸念していた小説作法のレベルなど途中から もうどうでもよくなっていた。
この情報、政・官・財の横暴をフィクションだと笑って無視する勇気は僕にはない。
多くの人に読んでもらいたい小説だ、さっそく家族で回し読みする。

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