去年の冬、きみと別れ (2018/2/9)

文字数 730文字

2016年4月15日 初版発行 2017年9月25日7刷発行
著者:中村文則
幻冬舎文庫



昨年来、中村文則がマイブームになっている。
思いのほか、作品数が多いのでなかなかキャッチアップできないでいるが、この春に映画化される未読作を優先してみた、本書である。
映画化は 「悪と仮面のルール」がつい最近公開されたばかりだから、映画界も中村文則ブームなのかな?

まずは文庫本、帯の宣伝コピー
「芥川賞作家が挑む 予測不能のミステリー」 作中のある一文を目にしたとき、あなたはいくつもの「真実」をつかみ損ねていたことに首をひねる。
そして頁を遡って、この物語を何度も、何度も、読み返すことになる。

実は僕はその通りの行動をしてしまった、何度も何度も読み返した。
話題騒然のベストセラーだそうだが、僕が何度も何度も読み返したのは、よく理解できなかったからに他ならない。
ミステリーの一つのジャンルに「叙述トリック」というのがある、読み手を勘違いさせるように書き進める手口である。多いのは一人称形式における本人のごまかし、つまり別人に成りすますようなテクニックである。
今作では、「僕」という人物そのものではないのだが、途中に挿入される《資料》という中の書き手が最初から不安定だった、トリックに感じられる。
はっきり言えばこのレベルの叙述トリックが大きな話題になるのが不思議だ。
現物の小説の扉に掲げられた謝辞のようなもの 「M・Mへ そしてJ・Iに捧ぐ」が謎を呼んだとのことだが、この叙述トリックもさほど稀ではない。
ひとえに、中村文則 その人の話題性によるものであろう。
ミステリーとして不備がある、ということではないが、
トリックが解き明かされた後のカタルシスが無い不愉快なミステリーは好みではない。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み