贖罪の街 (2019/4/27)

文字数 720文字

2018年12月14日 第一刷発行 
著者:マイクル・コナリー 訳:吉沢嘉通
講談社文庫



ハリー(ヒエロニムス)・ボッシュ 刑事シリーズも18作目、ついにボッシュと異母弟ミッキー・ハラー弁護士のガチンコ競演作が誕生した。
といっても、ボッシュはもはやロス市警の嘱託刑事でもなく、不当に退職させられたことに不服を申し立てている身である。その弁護士を異母弟のハラーに任せているような、いわば刑事としての人生の終焉に向き合っているところが、本作の背景となっている。

ストーリーはいたってシンプル、ハラーが弁護する殺人訴訟の弁護士側調査員としてボッシュがその力を見せつけるというのが見どころ。
しかし、ことはそれほど簡単ではない。
元刑事、それも殺人課の刑事が刑事弁護側につくということは、「警官」の矜持に反すること、彼の言葉によれば道の向こう側に渡るということになる。
それは仲間からの侮蔑、蔑視の対象になることを一番知っているのが、当人のボッシュである。
本作では、ボッシュは刑事弁護人のためではなく、あくまでも冤罪の陰に潜む真犯人を追求するために自分の才能を使う。
なかなか、面倒くさいヒーローではあるが、ボッシュ本人も官僚体制のなかでの捜査にはない自由な捜査に快感を覚えだしている。
殺人の冤罪を晴らし、真犯人を捜査するボッシュにとってそのヒントは、被害者の不運な出会い(THE CROSSING)、その小さなポイントを追うボッシュ、それを妨害する真犯人、
弁護側調査員という無力な権限のなかで、司法のそして政治の壁に立ち向かうボッシュ、
シリーズの新しい展開が予感される最新作だった。
捜査活動、アクション、そして法廷審理と盛りだくさんのお愉しみ、贅沢な一作だった。

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