躯体上の翼 (2014/12/29)

文字数 570文字

2013年11月29日初版
著者:結城光孝
東京創元社



異色のポリスストーリー「女性刑事クロハシリーズ」で注目していた著者の本格的SF作品。
処女作「奇跡の表現」もSFにジャンル分けされているが、これはライノベだろう、おそらくは。
先日読んだハードSF触れ込みの「火星の人」が、実際にはアメリカンガッツドリーム物語だったこともあって今作もちょっぴり心配していた。
いや、なかなかディストピアSFで、かつスペースオペラ、そこに仕掛けられた哀しい恋物語・・・
と作者の得意とする「哀愁」が上手く感じられて満足した。
オーウェルの「1984」に似た設定となった地球で生体兵器として生み出された
主人公「員(えん)」が、叛逆者として人間と本来の敵である「人狗(ひといぬ)」と戦う。
ダス・ベーダを彷彿させる、国家中央CPから死人にダウンロードして闘いの指揮を執る
「道仕」との知恵比べ、
同じ生体兵器との死闘など目新しくはないがアクション要素も充実している。
その伝説の最終兵器である主人公が、恋をしてしまう相手が、
「無知は力なり」とすべて葬り去られてしまった膨大な知識を有する謎の存在 「cy」。
主人公が闘うのはそのcyに逢いたいがため。
壮絶な戦いの中に観る人間の愚かさと対照的な人工物たちの一途な精神。
この諦めと哀しさは、日本製SFには欠かせない。
異彩を放つSFだった。
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