流浪の月 (2020/4/14)

文字数 948文字

2019年8月30日 初版 2020年4月7日 7版
著者 凪良ゆう
東京創元社



還暦後、読書は「お気に入り作家」の新刊を中心にしている、
残り少ない読書時間を悔いなく過ごすためにである。
とはいっても、そうすると偏向度合いがますます大きくなるのだが仕方ないと思っている、好きなことをするのがサンデー毎日のコンセプトだから。

ただひとつの例外的習慣が「本屋大賞作品」はフォローすることだ。
本屋さん(書店員さん)が顧客に読んでもらいたい本を選ぶのがこの賞の特徴だから、現在進行形の世間の読書傾向を知ることになる。
本来、世間と一緒が大嫌いな偏屈な僕だが、読書においてのセーフティネットとして「本屋大賞」に頼っている。

さて2020年の大賞作品はというと、今まで手にしたことの無い凪良ゆうさんという方の衝撃の作品。読んだ後から調べた著者プロフィールによるとBL作家だとのこと??
BLとはボーイズラブのこと、つまりは男性愛(ゲイ)物語ご出身だとのことで、衝撃の理由も理解できるような気がした。ただし、本作はBLではない。
通常(?)の愛情表現では説明のできない男女主人公の愛の形をとことん追求するという意味では、しかしながらBL風味なのかもしれない。
僕はと言えば、BLというキーワードを知らずに本作に翻弄されてしまう。
社会の表舞台ではおそらく理解されない受容されない愛の形、いやこれはもはや愛ですらないのかもしれない主人公二人が新鮮だった。
ほとんどが各章主人公(男女が交代する形式)の一人称と会話で構成される読みやすさのなか油断していると切り口鋭いこんな文章に出くわす・・・・
【それらを手放した代わりに、わたしは果てのない大海原に突き出した岬に、ひとり立ち続ける自由を手に入れた】
【ひとりのほうがずっと楽に生きられる。それでも、やっぱりひとりは怖い。神様はどうしてわたしたちをこなふうに作ったんだろう。】
・・・テーマがストレートに伝わってきた。
プロローグとエピローグ、仕掛けがあるだろうとは思っていたが最後に読者を暖かく包み込んでくれる、なかなかの曲者でもある。

人にとって一番大切なものは何か?
自由に生きることの尊さとそれを手に入れることの難しさを、逆説的に説いてくれる本作、BLセンシティブを決して軽んじてはいけない。
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