マルチン・ベック シリーズ 【警官殺し】 (2013/10/6)

文字数 643文字

1974年発表、1978年角川書店 単行本初版
著者:マイ・シュベール&ペール・ヴァール
訳:高見浩



最初からシリーズ10作でスウェーデン10年社会史を警察官の目で描くという構想も大詰めの第9作は、総まとめとの前の案内版になっている。
かなりスウェーデンの政策批判が先鋭化している。
世界に有名な福祉国家が抱える現実の苦悩と手詰まり感、
その影響を感じるマルチン・ベックと盟友コルべりの焦燥。
そしてコルべりは警官を辞職する。

第9作の事件は、田舎村の女性失踪事件、どうということのない事件だが
女性宅の隣に住んでいたのが、第1作【ロゼアンナ】の犯人、刑期7年を経て出所していた。
なんら証拠がないが、 世間が騒ぎ、マスコミが煽り、警察上層部はベックに逮捕するよう命じる。
ベックは真犯人は別にいると感じるが・・・・・・。

また、第2作【蒸発した男】の犯人もその後刑期を務め、
取材陣のひとりとしてコルベリと再会する。
コルベリはこの犯人に深い同情を感じていたがようやく胸の内を打ち明ける。
確かに、シリーズ終焉の予感漂う展開になっている。

ちなみにタイトルの「警官殺し」はスウェーデン警察機構への痛烈な皮肉である。
あるチンピラが警官と銃撃戦になって死亡するが、その際スズメバチの巣に逃げ込んだ警官がスズメバチの毒で死亡する。
警察はこの茶番を警官殺しとし、て国を挙げての大包囲陣、
より強固な警察力増強に突き進むことになる。
自治体警察から国家警察への移行、
警察の武力装備強化の流れの中でベックは悩み、
コルベリは去りゆく。
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