ウィチャリー家の女 (2013/7/29)

文字数 610文字

1961年発表
著者:ロス・マクドナルド
1976年ハヤカワミステリー文庫



アメリカハードボイルド小説の系譜には10年単位で大きな区切りがある。
1929年:ダシール・ハメット「血の収穫」
1939年:レイモンド・チャンドラー 「大いなる眠り(フィリップ・マーロウ シリーズ)」
1949年:ロス・マクドナルド 「動く標的 (リュウ・アーチャー シリーズ)」

ハメットが激動の20年代、
チャンドラーが不況・暗黒の30年代、
そしてマクドナルドが第二次大戦後の新しい価値観の40年代、
それぞれが描く時代の特徴が面白い。

本書はリュウ・アーチャー シリーズ6作目、
ハヤカワミステリー文庫開始に際して第一作として取り上げられたほどの名作である。
リュウ・アーチャーというと調査聞き込みタイプの私立探偵、
顧客の依頼にまめによく働く、時間を惜しんで関係者を探し出しては話を聞いて回る。
自分独自の世界観を持って、シニカルでいて正義を尊ぶ、これもハードボイルドなのだ。
本作では、ロスの大富豪「ウィチャリー家」の一人娘の失踪を調査する中で
3人の殺人事件に巻き込まれるリュウ・アーチャー。
その背景には「金」と「欲望」に屈折した新しい家庭の姿が浮かんでくる。
ひたすらに証言を収集して最後に犯人に行き着き正義を全うする…
今となっては稀有なハードボイルド私立探偵小説である。
ニューウエイブハードボイルドもこのような原点があってこそ。
ハードボイルドの古典にしびれた。
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