グラーグ 57 (2016/7/25)

文字数 751文字

2009 年9月1日 発行
トム・ロブ・スミス 訳:田口俊樹
新潮文庫



世界的ベストセラーミステリーになった「チャイルド44」の続き、
オリジナルタイトル THE SECRETよりも邦題が続編らしい、さすが新潮文庫だ。
前作では、ミステリー史上初といってもいいくらい奇妙な背景があった・・・
犯罪が存在しない中、44人の幼児殺人犯を捜査する主人公の苦悩があった。
スターリン政権下のソビエトにとって、理想の社会にはこのような異常犯罪は発生しないという理屈だった。
こんな無体な教条がまかり通るなかでの主人公レオ・デミドフのシリアルキラー捜査が描かれていた。

さて、今作ではレオは前作での功績もあってモスクワで「殺人課」を創設している。
前作で秘密警察の犠牲となった姉妹二人を養子縁組し、妻とも信頼を取り戻しているように見えている中で持ち上がる、忌わしい前職からの復讐。
国家保安省(秘密警察)時代に告発・逮捕した当時の担当者が連続して殺されていく、そして次はレオとその家族。
ここから始まる、怒涛の捜査、追跡、陰謀の数々が、当時のフルシチョフによるスターリン批判のソ連国内の動揺とともに描かれる。
その意味では、歴史犯罪ミステリーともいえないこともないが、物語の核は「家族」。
レオ本人の家族だけではなく、逮捕した側の人間、犠牲になった人間の家族にまで丁寧に語られている。
そして、邦題のグラ-グ(強制収容所)への潜入捜査、ハンガリー動乱の中での家族救出劇
…と壮大なスケールが本作の特徴となっている。
あくまでも英国(というかソビエト以外の国)から眺めたソビエトの政治混乱の中で家族を守る主人公だが、著者の発想力に感嘆するのみ。
先日、「チャイルド44」がトム・ハーディ主演で映画公開された。
この続編もぜひスクリーンで再会したいものだ。
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