13・67 (2018/2/1)

文字数 660文字

2017年9月30日 第1刷発行 12月10日第2刷発行
著者:陳浩基
文藝春秋



サスペンス、それも本格派の重厚感と社会派の批評精神に感嘆してしまった、ほんとに久しぶりの快感でもあった。
バッサリというと、本書は香港警察の名刑事が携わる事件を通じて香港の変遷を浮かび上がらせた傑作連作短編集だ。本書は6編の短編連作で構成されている、描かれているのは香港警察で伝説といわれた名警官クワンの事件簿エピソード。
僕の香港警察のイメージはとても乏しい、シネマでの「インファナル・アフェア(無間道)」におけるマフィアとの壮絶な駆け引きが印象的だったくらい。

時代背景は1967年から2013年まで(タイトルもここから)の46年、主人公クワンの警察官人生を香港の特異な情勢と絡めて読み取ることができる。
ただし、連作の流れにはちょっとした仕掛けがある・・・・逆時系列になっている。
中国支配の強まる2013年から、まだ返還を30年後に控えた香港暴動の最中の1967年に物語は遡っていく。
その結末に巧妙に仕掛けられたタイムループ、
あぁ 単なる連作ではなかったと大きな余韻に浸りもう一度本書を手に取ることになった。

「本格派」という言葉を先に使ったが、僕の印象ではクリスティスタイル、中でもポアロのテイスト、切れ味に近い。
香港警察、香港カオスの中でポアロの事件?
トリックの説明、謎解きなどを得意そうに開陳するクワンはやっぱりポアロだった、何よりもその死に方が。
アジアンミステリーというより、正統派英国推理小説の伝統が植民地香港で根付き結実した傑作だった。
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